病気やケガの痛み、肩こりや腰痛、頭痛、生理痛など私達は様々な痛みと向き合って生きています。当院にも様々な痛みにお悩みの患者さんがいらっしゃいます。電気治療や手技、時には患者さんの愚痴を聞いて少し心が軽くなり痛みが和らぐということもあります。今回は手技によって痛みが和らぐメカニズムについてのお話です。
痛いところに触れる
仮に身体のどこかをぶつけたとしましょう。その時、鋭い痛みは太くて伝達速度の速いAデルタ線維という神経線維が伝えます。同時に鈍い痛みは細くて伝達速度の遅いC線維が伝えます。
この時あなたは恐らく、とっさにぶつけた場所を手で擦ったり押さえたりしませんか?この行為によって触覚や圧覚などを伝える太い神経線維のAベータ線維が痛み信号が伝わるゲートを閉じる役目をして、鋭い痛みが脳に伝わることを防いでくれるのです。
また、痛みと同時に不安や恐怖も感じると思います。このような強い情動も痛みを強める働きがあります。この時、手で触れて安心することもゲートが閉じる働きがあると言われています。
これを「ゲートコントロール説」と言います。
薬などを使わずに痛みのコントロールをするには、文字通り「手当て」は最も効果がある方法ではないでしょうか。
セルフタッチ
ぶつけた場所を手で触れる、お腹が痛いときにお腹を手で擦る。痛みがやわらぐ気がします。これがまさに「手当て」であり、最近よく言われるセルフメディケーションですね。
この触れるという行為、他人に触れてもらうよりも自分で触れたほうが効果があるようです。自分で触れた時はその触れた手からの情報も脳に届き脳内で融合されることによって痛みの緩和をもたらすということの様です。
痛みは単に身体からの信号が脳に届くということではなく、脳が現在の身体の状態をどのように描いているかで、脳内で調整されているんですね。なんだかすごいです。
鎮痛
鎮痛には痛みが感覚の刺激で抑制されるというゲートコントロール説とは別のメカニズムもあります。按摩や指圧、鍼や灸などは局所の血流を改善し痛みのある部分の発痛物質の濃度を低下させることにより痛みをコントロールしています。温熱療法やストレッチも同様の効果があります。
手技療法系はこのメカニズムですね。
ゲートコントロール説
痛みの伝達路である脊髄には、痛みをコントロールするゲートがあり、門番役の神経細胞がゲートを開いたり閉じたりして調整している。
1965年に提唱された学説です。